2020年は人種差別問題、人権について考えさせられる出来事が多々起きています。
先日はBlack Lives Matterプロテストについて解説しました。
どうしてこんなにも大規模なプロテストになったのか、知らない人は是非読んで知ってください!
香港での政府に対するプロテストもニュースでよく流れたと思います。
この記事のトップ画像のように人々が街に溢れ抗議をしている映像が記憶残っている人も多いと思います。
この記事では2019年から2020年にかけて起こっている香港でのプロテストが何故おこったのか、そしてなぜこんなにも議論を呼んでいるのか解説します!
歴史的な動きを見逃さないようにしましょう!
香港と中国の関係性
香港は第二次世界大戦下の1941年から1997年までイギリス領土でした。
しかし、1997年に中国が”一国二制度”という制度を約束し、イギリスは中国へ香港を返還しました。
”一国二制度”…
香港は中国本土とは違う独自の政府・法制度・司法制度・通貨を持っています。
さらに、中国本土では認められていない集会の自由や発言の自由も香港では認められています。
2019年のプロテスト
以前にもいくつか政府に対するプロテストはあったようですが、2019年4月に始まったプロテストは大規模なもので、記憶に残っている人も多いはずです。
ことの発端は、香港政府が犯罪者の引き渡しに関する法律を変更したことにあります。
この法律の修正は、中国本土・台湾など、引き渡し条約は結ばれていなかった国への犯罪者の引き渡しが可能になるというものでした。
これが何故香港の人たちをデモに駆り立てたかというと、これは香港の持つ独立司法の侵害であり、中国本土が香港により大きな影響力を与えるための手段だと懸念したからです。
さらにこの法案の修正は、アクティビストやジャーナリストをターゲットにしていて、中国本土へ送還された場合、中国本土の司法制度で裁かれるため、不公平な裁判・ひどい制裁を受けるかもしれないと恐れる人も多かったんです。
このプロテストの目的はもちろん、この法案の完全撤廃でした。
それに加えて、”Five demands, not one less!“とスローガンを掲げ、このプロテストに参加した人も多くいました。
“Five demands, not one less!”のFive demands(5つの要求)とは何を指すのかというと…
- 犯罪者引き渡し法案の完全撤廃
- プロテストを暴動と称さないこと
- 捕まったプロテスト参加者の刑罰の軽減
- 警察による暴力行為に対する独自の取り調べ
- 完全な普通選挙権の実施
このプロテストで警察とプロテスト参加者の激突は激しさをまし、2019年9月にこの法案は撤廃されました。
しかし、香港の人たちは政府の対応が遅い、そして他の4つの要求が全然認められないとし、怒りが収まりません。
法案撤廃後の10月1日、中国本土が共産党政権70周年のお祝いをしているなか、香港では、18歳の少年が警察に胸を銃で撃たれ重傷を負うという事件が発生。
その後もプロテスト参加者が銃で撃たれたり、中国政府支持者と反対派の間での衝突も激しさを増していきました。
こうしたなか、香港の人たちの意向を図るため、同年11月に地方議会選挙が行われました。
結果は、民主主義支持が圧倒的勝利を収め、18の議会のうち17の議会が民主主義支持派によって運営されることとなりました。
このプロテストは世界中にも影響を与え、アメリカ・カナダ・イギリスなどあらゆる国で香港の運動を支持するデモが起きました。
中国大統領は、中国本土と香港を分け隔てるような動きに対して、「身体を打ち砕き、骨までも粉々にするぞ!」とプロテストを脅すような発言をしています。
2020年のプロテスト
一旦落ち着いたように見えたプロテストですが、2020年に再度始まります。
この原因は、香港の中国返還23周年を迎える本当に直前の6月30日夜に、中国政府が香港に対し国家安全法案(national security law)を発行したことです。
この国家安全法案は一見、国民の健康と安全・治安の維持を目的とした内容に思われますが、実際にはプロテストに対する警告になっています。
国家からの離脱、政府の転覆をはかるような行動、テロリズム行為、外国政府との共謀は全て犯罪行為とみなし、これにより捕まった人は終身刑になる可能性があるという内容になっています。
この法案可決により、元々計画されていた、香港での7月1日のプロテストは多くがキャンセルされ、そういった団体も解散するほどの事態となりました。Facebookのアカウントなど、この法案に触れるような証拠になるものを全て削除するプロテスト参加者も多くいました。
中国政府は香港に独自の司法機関として、国家安全保障局(Office for Safeguarding National Security)なるものを設置することを予定しています。
この法案は先ほども述べたとおり、外国人もターゲットにしています。
スパイ行為、お金をもらって国家の情報を手に入れる、国家の機密情報を外国、外国の組織、または個人に漏らすなどした全ての人は処罰の対象になるとしています。
この法案の発行に対して、今回は諸外国の政府をはじめAmnesty Internationalまでもが、「人権侵害」「民主主義の剥奪」「香港司法の侵害」として、中国政府に非難の声を上げてます。
カナダ政府は、この法案の発行をうけ、香港政府との犯罪者引き渡し条約を中止しています。
現地の香港では、7月1日にプロテストを行う人もおり、少なくとも370人はこの法律を破ったとして逮捕されています。
最後に
”一国二制度”は2047年にその効力を失効します。
それ以降の香港がどうなるのか、不安の声もたくさん上がっています。
今回の国家安全法案によって、政府に異議を唱えることはかなりのリスク/犠牲を払うことになってしまいました。香港の人たちは手も足もでなくなってしまった状態です。
また、諸外国と中国との関係をさらに緊迫させるような出来事なりました。
民主主義の大切さ、在り方を考えさせられる出来事ですね。