2020年はアメリカ大統領の選挙ですね!
世界的に注目のこの選挙ですが、2016年の選挙ではフェイクニュースが選挙結果に大きく影響したのではないかと話題になりました。
この2016年の大統領選挙の裏で一体なにがあったのか?
この記事では、2019年にNetflixで公開された The Grate Hack というドキュメンタリー映画の解説をしていきます!
Snowdenという、元CIA職員の暴露を基にした映画でもかなり衝撃を受けましたが、
私はこの The Grate Hackを観て、度肝抜かれました^^;
みなさんの想像の上を行くとおもいます!
この映画は、2016年のアメリカ大統領選挙で、Facebookの個人情報がどのように扱われ、どうやってアメリカ人有権者に影響を与えたかを暴露した映画です。
2人の内部告発を映画にしています。
なぜこの映画を解説するかというと…
私たちも、無意識のうちにソーシャルメディアに投票を左右される可能性があるってことを知っておいた方がいいと思ったからです。
2020年7月には都知事選があり、2021年には総選挙がありそうですね。
情報リテラシーを持って、選挙に臨みましょう^^
では、さっそく解説していきます!
※この解説は全て、この映画と元社員のインタビューを翻訳しているだけで、私の意見は一切ふくんでいません。
※一部、この映画ではカットされている、元社員のインタビューも引用しています。(引用:The Guardian)
※ネタばれ注意!!
Cambridge Analytica &キーパーソン
Cambridge Analytica(ケンブリッジ・アナリティカ):今回、このスキャンダルで問題となった会社。イギリスに拠点を置く。
「行動心理学+ビックデータ+ターゲットを絞って関与すること」により人の行動変化を促すことを目的としていた。
David Carroll:大学准教授。Cambridge Analyticaに、2016年の大統領選時に使われた自身のデータの開示/返却を要求。
☆Chris Wiley:元Cambridge Analytica社員で会社の立ち上げに関わった人物。データサイエンティスト。
☆Britney Kaiser:Cambridge Analyticaの元社員で、ビジネス拡大を担当していた重役。
Carole Cadwalladr:Cambridge AnalyticaとBrexit(イギリスのEUからの独立)キャンペーンの関係を調査していたthe Guardian社のジャーナリスト。
※特に☆の2人が重要人物!
背景
大学の准教授であるDavidは2016年の大統領選挙で、テクノロジーの誤用があったのではないと疑い、Project Almo(当時のトランプキャンペーンで作られた有権者情報のデータベース)を調べていきます。
そのプロジェクトでは、1日に100万ドルというお金をFacebookの広告代に費やしていました。
そして、この調査の先でCambridge Analyticaという会社に出会います。
この会社のデータの扱い方に疑問を抱き、選挙時の自分のデータの返却とそれがどのように収集され、どのように扱われたかの全面開示を求める裁判を起こします。
一方、イギリスではガーディアン社のジャーナリストであるCaroleが、Brexitを決める国民投票で、Cambridge Analyticaがかかわっていたのではないかと疑い、調査をしていました。
そして、彼女はBrexit選挙はトランプ選挙へ向けて規模を大きくする土台だったと、この2つの選挙とCambridge Analyticaとのつながりを見出します。
そして、彼女は証拠をつかむためにCambridge Analyticaの元社員に連絡を取り、Chrisの協力を得ることに成功します。
Chris Wileyの証言
Chrisは、データサイエンティストとしてCambridge Analyticaで働いていました。
彼はこの会社のことを、”プロパガンダ・マシーン”(政治的思想の宣伝マシーン)と呼んでいます。
当時のトランプキャンペンーンの責任者かつ、Cambridge Analyticaの設立者の一人でもあるSteve Bannonは、選挙という”文化的戦争”で勝つための兵器の開発に興味を持っていました。
政治を変えたければ文化を変える必要があり、その文化は人によって作り上げられているのだから、人を変える必要があるのです。
そしてCambridge Analyticaは、政治内で元々使われていたmicro-targetingというマーケティング技法と心理学を融合して、全アメリカ人有権者の心理的プロフィールを獲得していくのです。
つまり、一人一人をただの有権者としてではなく、一人一人の人格をターゲットとしていました。
有権者の心理学的プロフィールを構築するためには、一人一人の個人データが必要です。そこでChrisは、ケンブリッジ大学の教授に相談を持ち掛けます。
するとその教授が安く人の多くのデータを取集できる方法を提案します。
それは、特別な許可を受けたデータ収集のためのFacebook上のアプリケーションで、それを使えばユーザー本人だけでなく、その人のFacebook上の友人全てのデータも収集できるというものでした。
パーソナルメッセージも閲覧できたと言います。
彼曰く、Cambridge AnalyticaはFacebookへ100万ドルを支払い、データの収集をしていたと言います。
Chrisは、このアプリケーションを使って、たった数か月の間に多くて6,000万人のアメリカ人のデータを収集していました。
このデータをもとに、Cambrige Analyticaはその有権者が何に影響されやすいか、どこに消費をするのか、そしてその人の考え方を変えるために、何回影響力があるだろうWebコンテンツを配信すればよいかまでもを把握することができたと言います。
そのWebコンテンツの配信まで、心理学者を含む専門家たちが携わっていました。
この計算されつした方法で、有権者は自分に影響するWebコンテンツを見て、考え方を変えていったわけです。
もちろん、これが行われていたことを有権者は全くしらないので、そのコンテンツがまさか心理学的手法を用いられ、自分に訴えかけえているだなんて到底知り得ません。
Britney Kaiserの証言
もう一人の元社員であるBritneyも権力のある人たちからの脅し、誹謗中傷を覚悟の上、証言を始めます。
彼女は、Cambridge Analyticaは全てのアメリカ人有権者を平等に注視していたわけではないと言います。
有権者の中でも特に、考え方を変えることができるであろう人たちをターゲットにしていました。
その人たちのことを“the persuadable”(説得できる可能性がある人々)と呼んでいました。
そして、そのなかでも勝利政党の変動が起きやすい州―ミシガン州、ペンシルベニア州、フロリダ州―の persuadableに重きを置いていました。
システム上でこれらの州をさらに選挙区ごとに区分けし、それぞれの選挙区でトランプ勝利に十分な数のpersuadable をターゲットにしたら、色を変えていくという方法でした。
そしてChirisの証言と同様、そのpersuadableがトランプに投票するまで、彼らの行動心理をつかんだコンテンツを流し続けたと言います。
彼女はこのシステムをブーメランのようと話します。
要するに、Cambridge Analyticaは個人のデータをFacebookから収集し、一人一人の行動/思考心理を分析し、それにあったコンテンツをFacebookを経由して流していたということです。
Facebookがデータを削除するよう求めた後も、Cambridge Analyticaはそのデータを使っていたと言います。
Mark Zuckerbergの反応
このスキャンダルが発覚後、アメリカ議会でZuckerbergに対する質疑がありました。
Project Almo(このプロジェクトではFacebookが広告配信の土台となっていた)で、Cambridge Analyticaとトランプキャンペンーンが協力していたという事実があり、ZuckerbergがFacebook社員もこれに関わっていたことを把握していたかどうかという質問に対し、Zuckerbergは知らないと答えました。
しかし、Britneyは実際にFacebookの社員と面会したと証言しています。
スキャンダル発覚後
この2人の議会での証言、また、隠しカメラがCambridge Analyticaの幹部の会議をとらえ、それが証拠としてテレビで放映されると、この会社は自己破産を理由に倒産しました。
評論家は、自己破産はただの理由付けで本当は証拠隠滅のためだという人もいます。
最後に
結局、准教授のDavidは自分のデータを返却することができませんでした。
この映画がNetflixで放映された2019年7月に、Facebookはプライバシー侵害で政府から50億ドルの罰金を命じられました。
さて、これを読んであなたは Persuadables(説得できる可能性のある人)にならない自信がありますか?
自分自身でも気づくことの難しい心理的な部分を分析され、それを選挙の際に使われる…
すごい技法ですよね。
自分がしっかりとした意志を持っていないと、SNSに流れてきたコンテンツに心動かされかねないですね。
情報リテラシーの重要性を改めて認識させられる映画ですよね。
興味のある方は、是非見てみてください^^